ホリンヘム市議選、不正疑惑を受け再投票——委任状悪用問題の深層
捜査は続くなか、市は6言語で対策を講じ再選挙に臨む
オランダ南ホラント州ホリンヘム市で、3月18日に行われた市議会選挙をめぐる不正疑惑を受け、再選挙が実施された。市議会が4月31日に再選挙の実施を決定、選挙法の規定する「決定から30日以内」という期限のなかでの対応だった。今回の騒動の核心にあるのは「委任状投票(volmacht)」と呼ばれる制度の悪用疑惑だ。
何が問題だったのか——委任状の組織的悪用
オランダの委任状投票とは、有権者が信頼する第三者に投票を委ねられる制度だが、3月の選挙後、すぐにその悪用を示す声が上がった。特にトルコ系コミュニティのなかで、有権者が委任状を強制的に渡されたとされる。
ある投票所では、650票のうち135票——実に約21%——が委任状による投票だった。さらに、ある候補者が複数の委任状を持った人物を連れ、同じ投票所を5回にわたって訪れていたことも判明している。投票所のボランティアスタッフに対し、その候補者は「ソーシャルメディア用に写真を撮りに来ただけ」と説明していたという。
メリサント市長はこうした委任状の勧誘行為と有権者への影響行使について刑事告訴に踏み切った。検察は刑事捜査を開始しているが、検察の広報担当者によると予備捜査はまだ継続中であり、近い将来に結論が出る見通しは立っていないという。つまり、「本当に不正が行われたのか」「関与した候補者は誰か」「選挙結果への影響はどの程度だったか」——こうした根本的な問いに答えが出ないまま、ホリンヘム市は再選挙に踏み切らざるを得なかった。
再選挙に向けた市の対応
市は再発防止に向けて複数の手を打った。オランダ語、英語、ポーランド語、ウクライナ語、アラビア語、トルコ語の6言語で選挙情報を記載した冊子を全投票所に配布。各投票所の責任者には委任状投票への注意を促す特別説明会が開かれた。
メリサント市長は再選挙前の金曜日、市内のモスクを訪問し、集まった信者に直接呼びかけた。「委任状投票は法律上認められているが、できれば自分で投票してほしい。そして、厳しい目が向けられていることを忘れないでほしい」と語りかけた。
なお、今回の再選挙はメイバカンシー(春休み)の時期と重なっており、国内外に旅行中の有権者も多く、委任状投票の件数が増える可能性は否定できない状況だった。
深夜の開票——問われるオランダの選挙制度
投票は21時に締め切られ、30分後に投票率が発表、暫定結果は深夜0時ごろに出る見込みとされていた。
今回のホリンヘムの事例は、オランダの委任状投票制度そのものの脆弱性を浮き彫りにした。一人の有権者が最大2名分の委任状を行使できるこの制度は、利便性の高い一方で、組織的な悪用を許しやすい構造的な問題をはらんでいる。在蘭日本人にとって直接の影響は限られるものの、多文化社会における選挙の公正性をどう担保するかという問いは、オランダ全土にとっての課題でもある。検察の捜査の行方とともに、制度改革に向けた議論が今後本格化するかが注目される。
情報源: NOS Algemeen
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