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オランダ「.nl」ドメイン40周年—若者離れとAI時代の陰り
テクノロジー 読了 2分

オランダ「.nl」ドメイン40周年—若者離れとAI時代の陰り

草創期の先行優位は今も続くのか。インターネット黎明期の功績と現在地

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1986年4月25日、アムステルダムの数学・情報科学研究所(CWI)に勤めていたピート・ベールテマは、オランダを代表する国別コードトップレベルドメイン「.nl」の取得申請を米国で承認された。これは米国外の国としては初めてのことだった。同年5月1日、ベールテマは自ら「cwi.nl」を登録し、その後10年間、オランダのドメイン管理を一手に担った。現在その役割はSIDN(オランダインターネットドメイン登録財団)が引き継いでいる。あれから40年。オランダはこの節目を祝う一方、インターネットの草創期に築いた優位が静かに揺らいでいる。

大学と研究者が切り開いたインターネット黎明期

「.nl」ドメインの最初の100件を振り返ると、その3分の2が大学や研究機関によるものだった。アイントホーフェン応用科学大学、国立航空宇宙研究所、ナイメーヘン・カトリック大学などが名を連ね、まさに研究者たちがインターネットの最初の「住人」だったことを示している。こうした学術的な需要が、大西洋横断の初期インターネット接続を生む土台ともなった。アムステルダムのニコフ(Nikhef)では素粒子研究が盛んに行われており、世界中からそのデータへのアクセス需要があった。オランダのインターネット交換拠点AMS-IXのAS番号が「1200」と低い値であることも、同国がいかに早期からこの分野で活躍してきたかを示す証左だとAMS-IXのディレクター、ピーター・ファン・ブルヘルは述べている。

若者離れとAIが変えるウェブの存在意義

40周年の祝賀ムードに影を落とすのが、ドメイン登録数の明確な減少傾向だ。新規登録はコロナ禍でオンラインビジネスへの需要が高まった2022年に最高水準に達したが、その後は低下が続いている。SIDNによれば、パンデミック期に急増したドメインの多くは契約を更新されなかったという。しかし問題はそれだけではない。18〜29歳の若年層では、ドメインを取得したいと考える割合がコロナ直後の55%から、直近の調査では20%未満にまで急落した。SIDNはその主因としてAIの台頭を指摘する。検索エンジンがユーザーの質問に直接回答を返すようになり、個人や中小企業が独自のウェブサイトを持つ必然性が薄れているというのだ。

海底ケーブルとインフラ優位の喪失

デジタルの地殻変動はドメイン数だけにとどまらない。かつてオランダは北海を通る海底ケーブルの要衝として、欧米間のデータ流通の中継地たる役割を果たしていた。しかし現在、大西洋横断ケーブルの新たな陸揚げ地としてフランスやポルトガルが好まれるようになっている。用地確保のしやすさや規制環境の柔軟さが理由とされ、北海を走る既存ケーブルの老朽化もこの傾向に拍車をかけている。また、かつては国営通信会社が共同で整備していた海底ケーブルインフラは、今やグーグルやマイクロソフトといった大手テック企業が主導しており、北海ケーブルの約70%はすでにこれら企業の所有となっている。「先行者利益の法則」という言葉がある。早い段階で優位に立った者が、その優位を維持するためにかえって変革を怠るという逆説だ。オランダのインターネット史は輝かしいが、1986年の先行優位は自動的には続かない。在蘭日本人を含む多くのデジタルユーザーにとっても、この問いは決して他人事ではない。

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情報源: NRC

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